継続は力なりと思う看護師の日記

思えば長く続けている看護師というお仕事、研究、そのほかについて書こうと思います

子宮移植を考える

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職場で先月の新聞を片付けていたら、「子宮移植」という文字が目に留まりました

 

子宮を移植するの?

というので驚いたのですが、正直、考えてしまいました

喜ばしい、というよりも、大丈夫かな、良いのかなという懸念

 

生まれつき「子宮」がない女性らの妊娠・出産を可能にする国内初の「子宮移植」手術に向け、慶応大学のチームが早ければ今年中にも臨床研究の申請を行うことが分かった。

 慶応大学では生まれつき「子宮」がないロキタンスキー症候群の女性が出産するため、第三者の子宮を移植する研究を続けており、サルでは移植と出産に成功している。研究は関連学会などの議論、判断を得た上で、ロキタンスキー症候群の女性5人について子宮移植を目指すという。

 今回検討されている手術は、生まれつき子宮のない女性に母親や姉妹から子宮を移植するケース。閉経後の母親の子宮も胎児を育てる機能は残っていることから中高年からの子宮移植も可能だとされている。そこに体外受精した夫婦の受精卵を戻す方法をとる。

 とのことでした。

 

最初、これは、国の少子化対策と合致して進められているのもなのか、不妊治療費を税金で負担するならば、経済的にこちらのほうが良いという理由で進んでいっていることなのか、と考えました

 

しかし、子宮移植とは子宮のない女性を対象としており、子宮がない場合の子供を持つ方法としては代理母出産しかありません

代理母は日本では禁止されているため、税金投入とは関係ありません

 

臓器移植には、「生命に関わるもの」もしくは「生命には関わらないが、移植を受けることによってQOLが大きく改善するもの」に大きく分かれます。

移植に大きなリスクはあるけれども、やらないと死んでしまうから移植する

これが、本来の移植だと思ってます

 

角膜や腎臓は、QOLの向上のための移植になります。目が見えない人が見えるようになる、週3日、半日がかりの透析が必要だったのにしなくて済むようになる、というのは、QOLから考えると、意義はかなり大きいです

 

では子宮移植の目的は何かと言うと

子供を生む、自分たちの血のつながった子供を持つということです

嫌な言い方かもしれませんが、精神的な満足を得るため、と言えるような気がします

クローン技術だったり、生殖技術の進歩の時には、技術があれば、何をしても良いわけではないという議論がおこります

神への冒涜、と言われたりもしますが、神様が人間にそのような技術を持つことを許した、とも解釈できるので、あまり宗教的な反対には理解ができません

 

妊娠後も、胎児の発育不足や早期陣痛など、多くのリスクがあり、また、拒絶反応のリスクを避けるため、出産後は子宮を除去する方針だそうですが、それでは子宮移植において、子宮は完全に出産のための道具です

 

子供を持ちたいのに持てなかった人が医学の進歩により、持つことができる

これは素晴らしいことなのですが、それを言うなら、ゲイの男性だって、子供を持つ権利はでてきます

実際、子供が欲しい、というゲイカップルは珍しくないようです

 

手術で血管をつないで、腹部にスペースさえあれば提供された子宮を男性にも移植するのはさほど問題にはならないそうです。

ただ、ホルモンのコントロールは難しいようで、臓器をつなぎさえすれば機能まで期待できるわけではありません
 出産に成功した方は、もともと子宮がない以外は女性だったため、体が妊娠に対して反応をして、受精卵を無事出産まで育てられました。男性の場合は外部からさまざまなホルモンを追加投与する必要があり、それらホルモンが男性にどのように影響するかはまだわかっていません

 

生きること同様、動物として種を残すことは本能ですから、出産を可能にする手段があるとすると、多少危険でも選択する人が出てくるように思います

 

例えば、「子宮の形が流産しやすい」と言われ、連続して流産した場合、自分の健康な子宮があるのに移植手術を受けることを選択してしまわないか

 

子供を持たなくても構わない、と思っていても、夫や周囲のプレッシャーによって、義母や母から子宮をもらい手術を受けざるを得ない、ということがないか

など、心配はたくさんあります

 

正直、私は子供は産むよりも育てることに意義も価値もあると思っているので、苦しい、泥沼と言われる不妊治療に賛成ではありません

治療して出来ればいいね、くらいで続けるのは良いのですが、体も夫婦関係も経済的問題も抱えながら辛い思いを何年もして治療を続けるのは反対です

 

この子宮移植も、様々な問題がオープンに話し合われ、女性が生まなくてはいけないプレッシャーをかけられるきっかけにはならないことを願います